チャド共和国の法人・会計監査・税労務等の基本情報

 

 

 

1. 国家基本情報

 

首都

首都:ンジャメナ

通貨・為替

通貨:中央アフリカCFAフラン(XAF)
為替:1 USD=約582 XAF(2025/05月平均)

経済指標

名目GDP:約216億ドル(2024年)
一人当たりGDP:約1,200ドル(2024年)

石油輸出が経済の柱で、近年は2023年に実質GDP成長率5%を記録したが、2024年は約3.5%に減速する見通しである。インフレ率は2024年に8~9%となっている。

日本との関係

日本との貿易額は2021年時点で対日輸出約0.1億円、対日輸入約3.4億円と極めて小さい。日本は人道支援を中心に累計約8.2億円の無償資金協力を行ってきた。

2. 法人設立制度

法人形態

チャドはOHADA(一体化されたアフリカ企業法)の加盟国であり、有限会社(SARL)や株式会社(SA)、簡易株式会社(SAS)など標準的な法人形態が利用できる。支店形態での進出も可能である。

外資規制

外国資本に対する包括的な持株規制は基本的に存在しない。原則として全ての産業で100%外資が認められるが、国防など一部安全保障上の分野では例外的に制限が課される場合がある。

資本金要件

OHADA企業法では有限会社(SARL)は最低10万CFAフラン、株式会社(SA)は最低1,000万CFAフランの資本金が要求される。簡易株式会社(SAS)には法定の最低資本金はなく、柔軟に設定できる。

支店開設時には資本金は不要だが、2020年財政法の規定で年間想定売上の0.5%相当額を保証金として政府に一時預託する要件がある。

登記手続き

投資促進庁(ANIE)が企業登記のワンストップサービスを提供している。商業登記には定款の公証、出資金払込証明、取締役の身分証提出などが必要である。なお、前述の保証金0.5%の納付も登記完了の条件となっている。

3. 税制度

法人税

法人税率:35%(国外源泉所得は非課税)

最低税として売上高の1.5%を毎月納付する規定がある。

付加価値税(VAT)

標準VAT税率:17.5%

一部の生活必需品や現地生産品には軽減税率9%が適用される。輸出取引および国際輸送には0%の税率(輸出免税)が適用される。

VATの納税義務者は月次で申告納付し、一定条件下でVAT還付を申請できる制度がある。

個人所得税

個人所得税は累進税率で最高30%(年収約1,200万CFAフラン超部分)となる。給与所得は源泉徴収され、従業員3.5%・雇用主16.5%の社会保険料控除後の所得に課税される。利子・配当・家賃収入などには5〜20%の分離課税が適用される。

その他の税金

その他、源泉徴収税(配当・サービス料に10〜20%)、関税(5〜30%)、物品税、財産税など複数の税目が課されている。社会保障のための給与課税も存在する。

4. 会計・監査制度

会計基準

チャドではOHADA会計システム(Syscohada)が適用されており、OHADA統一会計基準に従い帳簿を作成する義務がある。企業はフランス語で会計記録を備え付け、毎年度の財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作成する。

監査要件

株式会社(SA)は法定監査人(コミッサール・オ・コンプト)の選任が義務付けられ、大規模な有限会社(SARL)も一定基準(資本金や売上高)を満たす場合には監査人の任命が必要となる。それ以外の中小企業では法定監査義務はないが、自発的に任意監査を受けることも可能である。

登録要件

公認会計士・監査人として業務を行うには、国家会計士協会への登録が必要である。監査業務はチャド公認会計士(Expert Comptable)の資格保持者かつ協会に認可された者に限られる。国外資格者が業務提供する場合、現地の専門家と提携する必要がある。

財務諸表の提出

事業年度終了後、法人は税務申告時に財務諸表を税務当局へ提出する義務がある。また一定規模以上の企業は商業登記所へ財務諸表を所定の様式で開示・登録する必要がある。これにより第三者が決算情報を閲覧可能となる仕組みである。

5. 労務制度

雇用契約

チャド労働法では期間の定めのない契約(無期雇用)が原則であり、期間限定の有期契約は最大24か月まで(1回更新可)とされる。有期契約は書面で締結し、試用期間は最長3か月程度設けられる。

最低賃金

最低賃金:月額約6万CFA(2011年改訂)

全国一律の法定最低賃金は長らく改定されていない。

労働時間

所定労働時間:週39時間(1日8時間×週5日相当)

時間外労働は年間94時間を上限に認められる。時間外労働には割増賃金(通常賃金の1〜2割増以上)が支払われる。法定労働時間の上限は休憩含め1日11時間、週54時間(残業込み)である。

解雇・退職

無期雇用契約の解雇には労働者の勤続年数に応じた解雇予告期間(通常1〜3か月)が法定されている。不当解雇の場合、雇用主には解雇補償金の支払い義務が生じる。

労働争議・労使関係

労働組合の結成とスト権は法律で認められている。労使紛争は労働監督官の調停や労働裁判所で処理される。

6. 外国人進出企業向け制度

特別経済区と投資優遇

チャドには明確な経済特区(SEZ)は整備されていないが、投資奨励法に基づき特定分野への投資に対する優遇措置が用意されている。新規投資案件に対しては操業開始から最長5年間の法人税免除などの税制優遇措置が講じられる。また大型投資には設備輸入関税の免除など追加インセンティブも与えられる。

投資促進機関

前述のANIE(投資・輸出促進庁)が対内投資の窓口であり、海外企業の法人設立や各種許認可取得を支援している。ANIEではワンストップショップにより現地法人設立の手続きをまとめて行うことができる。加えて商工会議所等も現地ビジネス情報の提供や投資家へのサポートを行っている。

ビザ・労働許可

チャドで就労する外国人は就労ビザおよび労働許可証を要する。雇用企業が政府の雇用促進局(ONAPE)を通じて申請し、当該職務に適任のチャド人がいないことを証明する必要がある。法律上、外国人労働者は全従業員の2%以内(チャド人98%以上)に制限されており、これを超える雇用には労働当局の特別許可が必要となる。

外貨規制

チャドはCEMAC域内通貨であるCFAフランを採用しており、その資本取引には域内共通の外為管理規則が適用される。合法的な利益配当金等の送金は認められるが、約50万ドル超の国外送金には中央銀行(BEAC)の許可が必要になるなど、資金移動には規制がある。

7. 金融・資金調達制度

銀行口座開設手続き

現地で銀行口座を開設するには、法人登記証明書、定款、代表者身分証明、納税者番号などの提出が求められる。外為規制上、株主資本の払込証明を銀行経由で行う必要がある場合もある。

現地借入・金利水準

商業銀行の貸出金利は年10〜15%と高く、十分な担保がない中小企業にとって資金調達は困難である。

送金・為替サービス

国内送金は銀行経由が中心だが、民間送金サービスも利用される。CFAフランはユーロにペッグされ安定している。国際送金は外貨規制の下で可能だが、手続きに時間を要し注意が必要である。

フィンテック動向

金融インフラが未発達な中、モバイルマネーなどフィンテックサービスが徐々に拡大している。2023年に通信大手のモバイル送金サービスが認可され、2025年には初の地場企業が決済サービスの免許を取得した。

8. 文化・商習慣・その他リスク

契約遵守文化

ビジネスにおいて契約書は締結されるものの、法的強制力よりも相互の信頼関係に依拠する場面が多い。ただし裁判手続きは長期化しがちで、現地パートナーとの十分な協議と信頼関係構築がトラブル防止に重要となる。

汚職・賄賂リスク

行政手続には汚職のリスクがあり、贈賄要求を排除する厳格な社内統制が不可欠である。

治安・政情リスク

国内治安は不安定であり、特にリビア・スーダン国境周辺やチャド湖地域では武装勢力・テロ組織の活動により極めて危険である。2021年には大統領が戦闘で死亡し軍事政権へ移行する政変が起きるなど、政治情勢も流動的である。

渡航に際しては最新の安全情報の確認が不可欠であり、進出時には万全の安全対策と有事対応計画を講じる必要がある。

パートナー関係構築の留意点

人間関係を重視する文化のため、初期段階では頻繁に対面で協議を重ね、相互理解を深めることが重要である。ビジネス言語はフランス語(および一部アラビア語)であり、言語面の配慮も必要である。

9. 実務上のポイント・進出のしやすさ

日系企業事例

2023年現在、チャドに恒久的拠点を置く日系企業は存在しない。他国からの駐在員事務所等も確認されておらず、日本企業のプレゼンスは主に政府開発援助(ODA)や国際機関経由の活動に限られる。

競争優位性・課題

チャド市場は経済規模が小さい反面、石油・鉱物資源や農牧業など未開拓分野に商機が存在する。一方で内陸国ゆえの物流制約、インフラ未整備、消費市場の購買力不足といった構造的課題が多い。

また、低価格品では欧州・中国企業との競争が激しいため、自社の強みを活かした差別化戦略が重要となる。

手続き難易度

事業環境の難易度は非常に高く、世界銀行「ビジネスのしやすさ」ランキングでは190か国中182位(2020年)と下位に位置する。法人設立に2か月以上かかるなど行政手続に長期間を要する。

専門家ネットワーク

チャド進出にあたっては現地事情に通じた専門家の支援が不可欠である。各分野の信頼できる法律・税務・労務の専門家を確保し、当局対応や許認可取得の支援を受けることが望ましい。またJETRO等のネットワークから最新の規制動向やリスク情報を収集する努力も重要である。

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